ワイン不完全ガイド「シェルブロ」

戦わないワイン商 (株)Sheldlake代表村山による、ワインとかなんかそんな感じのブログ

醸し醸され醸さず 〜 ワインのタイプごとにSO2許容量が違う理由 〜

〜前回続き ~

 

 

再掲ですが、EUの「ビオワイン」における亜硫酸塩の許容量。  

 

タイプ EUビオワイン
(単位:mg/ℓ)
100
白・ロゼ 150
発泡 120
甘口 270

 

「各ワインのタイプで許容量違うのなんでじゃい」って話なんですが

これ、根本的な各ワイン造り方/性質に関連します。

 

 

赤ワインが最も亜硫酸塩の許容量が低いじゃないですか。 これつまり

赤ワインはより少ない亜硫酸塩で事足りる

とも取れますよね。

 

逆に、白ワインの許容量って、高く設定されてますね。 これつまり  

白ワインはより適量の亜硫酸塩が必要

ってことです。

 

まずはこれ、なんででしょうってお話。

 

※だからといって、「白ワインの方が赤ワインより健康に良くない」ってのは嘘ですよ。

前にも書いた通り、亜硫酸塩(二酸化硫黄:SO2)ってのは、発酵時に自然生成するものですし、「ビオワイン」じゃなくたって無闇に添加してるようなワインじゃない限り、“生涯毎日1本飲んでも害はない”レベルと言われています。

(毎日ワイン1本飲んで頭痛がしたり身体を壊したら、それは亜硫酸塩ではなく「アルコール」のせいです)

 

 

赤ワインと白ワインの そもそもの違い

 

 

▲上:白[ゲヴュルツトラミネール] / 下:赤[サン・ローラン]

 

そもそも、赤ワインと白ワインの違いって、造り方にあるんです。

“黒ブドウを原料とするか、白ブドウを原料とするか”

じゃありませんぞ。黒ブドウを用いた白ワインだって、稀にあります。

誰もが聞き及ぶスパークリングワイン「シャンパーニュ」だって、その多くは白ブドウだけじゃなく黒ブドウの果汁もブレンドしてます。

 

簡単に言っちゃえば 

 

◯白ワイン:ブドウを搾ってから果汁のみを発酵

◎赤ワイン:ブドウを潰し、果皮・種子ごと果汁を発酵(その後に搾る)。

 

“発酵のタイミング”と言えば良いんですかね。

 

 

赤ワインに色がついてるのはなぜか

そう、赤ワインの場合、発酵中もブドウの皮と種を一緒に漬け込むんです。「醸し」(かもし)って言います。

 

ぷくぷくと発酵が開始してから3日くらい(地域により異なります)

  • ブドウの皮(果皮)からは「アントシアニン」って“色素
  • 種からは「タンニン」って呼ばれる“渋味”を成す成分

などなどなど、様々な成分が果汁へと抽出されていきます。

だからです、赤ワインに色がついてるの。  

 

※ちなみに、熟成期間を長く取る様な、いわゆる長期熟成タイプのワインなんかは、この「醸し」の期間をより長く取ります。 果皮や種子からの成分をより強く抽出するんですな。

 

んで、上記の「アントシアニン」とか「タンニン」っていうのが、皆さんご存知「ポリフェノール」の一種。

「ポリフェノール」って一言で言っても、そりゃもう、沢山の種類の化合物があるようです。「ポリフェノール類」って表現されるのはそのため。

 

果皮や種子と一緒に醸し、その成分を抽出して造られる。 つまり、白ワインに比べ、赤ワインにはこのポリフェノール類が多く溶け込んでいます

 

 

ここで、ようやく話が戻ります。

 

 

亜硫酸塩の添加量の違い 〜赤ワインの場合〜

このポリフェノール類、優秀なことに、酸化を抑える機能を備えてます。 ジェイミー・グッドさんの名著・『新しいワインの科学』では

 

『ポリフェノール類には、天然の抗酸化作用がある』

 

なんて表現されてます。

 

ってことはです。

赤ワインの場合、亜硫酸塩くんのお仕事の一端を、最初からある程度担ってくれる成分が多く含まれている。

それはつまり、亜硫酸塩をより必要としないってことになりますよね。

 

よって、亜硫酸塩の許容量が低く(より厳しく)設定されてる ってわけです。

 

▲上:白ワインの発酵・熟成を行うスチールタンク

▼下:赤ワインを熟成しているオークの大樽(オーストリア)

 

亜硫酸塩の添加量の違い 〜白ワインの場合〜

逆に、白ワインの場合。

 

白ワインにおいて重要な点、つまり「魅力」って、何でしょう。

それは、フルーティな果実味やイキイキとした酸味、ではないでしょうか(もっと言うと、そのバランスかと思います)。

もちろん、そのワインのスタイルにより様々ですけどね。好みもあるでしょう。

 

フレッシュさを売りにする白ワインの場合、醸造過程全体において大切にしなければならないこと、それは 醸造過程全体を通して酸素に晒さないこと

oh,so simple HAHAHA.

 

そうなんです。 「ブドウの、フレッシュでフルーティな果実味が信条」ってワインの場合。多くは、写真にある様なステンレスタンクで、“密閉”された状態で醸造が進められます。 (「還元的プロセス」なんて言われます。「酸化と還元」、理科の授業にありましたね。私は何も覚えてません)

 

ココでも少し触れてますが

ワインが酸化に押しやられる場合、真っ先に割を食うのはフレッシュな果実の香り成分なんだそうです。  

 

まとめると 

赤ワインにおける「ポリフェノール類」という味方のいない白ワイン。

さらに、酸素になるべく触れないように進められる醸造行程。

酸素による被ダメがより大きい

ということです。

 

よって、白ワインは亜硫酸塩の許容量が高く(緩く)設定されてるというわけです。

 

※ もちろん、全ての白ワインでこういったプロセスを踏むわけではなく 生産者によっては、発酵時に果汁を酸素に触れさせ、あえて一部の成分を酸化させて進めます。つまり、赤ワインと同じ様な行程ですね。 そうすると、白ワインでも、酸化により強いワインに出来上がるんだそうです。

但し、その酸素コントロールは、より気を遣う必要があります。

 

お次ぎは甘口ワイン。  

 

〜 続く 〜

 

 =・=・=・=・=・=・=・=・=・=

株式会社シェルドレイク 代表村山

ワインのご購入はコチラへ

Facebook(企業ページ)

Facebook(個人)

=・=・=・=・=・=・=・=・=・=