ス~っとバレンタイン ~ バレンタインの思い出 2 ~
〜 続き 〜
バレンタインと聞いて、思い出される記憶のもう一つが、今度は20歳くらいの頃。
当時、勉強しによく行ってたファミレスがあったんです。
行く時間は、いつも夜中から明け方まで。コーヒー1杯で、大変お世話になってました。
いつものようにそのファミレスで勉強してた、ある日の夜中。
一息入れようと、タバコに火を付けたんです。
当時私、タバコ吸ってたんですが、その日はいつもと違う銘柄でした。たまたまです。売ってなかったとか、そんな理由です。
ふ~っと、いつもとは違う風味の煙を吐いて、休憩してたその時
スッ て 私の前に 気配を感じて。
見上げると、見覚えのない女性が立ってましてね。しかもガン見。
多分、たっぷり5秒は見上げてたと思います、無言で。
すっごい見つめられてたんですけど、私、ぽかんですよ。
今度こそ、本当に、知らない人なんですよ。歳も結構上であろうお姉様だったし。
だからその5秒間くらいで
(え…?店員さん…?コーヒーのお替わり入れに来てくれたのかな…?)
(え…?最近のファミレスの店員さん私服OKなの…?)
(え…?すごい見られてるけど…?何…?新手のカツアゲ…?)
など、20パターンくらいの可能性を考えました。
そしたら、「こ れ ど う ぞ」って口元微笑みつつ、スッて袋をテーブルに置きまして。
「あ、はぁ、どうも」とかなんとか言った私を尻目に、「タバコの銘柄、変えたんですね」って言って、自分の席に戻って行く女性。口元に微笑みを残したまま。
あっけにとられ、残される私。
なんだったんだろ…って不思議に思って、恐る恐る、袋の中を見たら、チョコらしきものが。
そこで気づいたんですよ、「あー、まさか、バレンタインか」って。
「え、まじ?知らない人にチョコとかもらっちゃったの?俺?まじで?なになに?すごくね?これすごくね?すご…く……
…ん?
あれ?
ってか
ちょっと待って
なんで
いつもと違うタバコだって 知って る の…?
いつも 見て る の …?
初対面 だよ ね …?」
ス~~って 背中、冷た〜く
いやいやいやいやいや
もうどっから突っ込めば良いのか、ツッコミどころが星屑のようだよ。
普段から声かけろよと。掛けられたけども今。
もっと普通~にさ、こう、「お隣良いですか~」みたいなさ、あるじゃない。
「いつもここ座ってますよね~」ってさ。
「そうですねぇ。貴女もいつもいらっしゃるんですか?」ってさ。
「へ~ご近所なんですね~」ってさ。
「よかったら連絡先でも」っっってさ。
なんか、そういうの。そういうのよ。
そういうちょっとしたことから始まるサムシングとかアバンチュールとかボンボヤージュとかさ、あるじゃない。
それを、よりによって唐突なチョコて。会話しろよと。
しかも、何さりげなく「いつも見てるぞ」アピール入れてんだよと。余計怖いわ。もうちょいなんかあるだろと。「私メリーさん、貴方のタバコの銘柄だって知ってるの」ってか。
その日はもう、そそくさと会計を済ませて、後ろを振り返り振り返り、家路を急ぎました。
それ日以降、そのファミレス、行かなくなりましたね。
あれから十数年、あの人、今なにしてるんだろう。
そして、誰を追ってるんだろう。
毎年バレンタインの時期になると、そんな事を思います。
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株式会社シェルドレイク 代表 ムラヤマ
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